当院概要

院名川﨑接骨院
住所〒202-0012 東京都西東京市東町5-9-3
TEL042-421-7695
診療時間09:00~12:00
15:00~20:00
(土曜 9:00~14:00)
定休日:日曜・祝日
公益社団法人東京都柔道接骨師会

足の捻挫治療

捻挫は靭帯のケガです

 足首の捻挫はとても多いケガです。スポーツや階段を降りている際などに足をグキッと捻った経験をお持ちの方も多いと思います。患者さんにぜひ知っていただきたいのは、足首の捻挫は靭帯のケガだということです。程度は様々ですが、靭帯が痛んでいるという認識を持ってください。靭帯の線維が少しだけ切れた程度のものから、部分断裂、完全断裂まで、広い意味ではすべて捻挫と呼ばれます。

 したがって、「捻挫だから痛みが引けば大丈夫」「捻挫だからそんなに固定しなくてもいい」と思ってはいけません。靭帯が修復する間は、傷が開かないように固定していないときちんと治りません。治療の目的は靭帯をきちんと修復させることで、「痛みが引いたから治った」と思ってはいけません。

 足首の捻挫で損傷される靭帯は主に前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)、踵腓靭帯(しょうひじんたい)の2つです。イラストのように、外くるぶしの骨の周りにある靭帯が損傷されます。

 足首の外側の靭帯損傷の重症度は以下の3段階に分類されます。

Ⅰ度は前距腓靭帯または踵腓靭帯の部分損傷

Ⅱ度は前距腓靭帯の断裂

Ⅲ度は前距腓靭帯断裂と踵腓靭帯断裂

Ⅰ度の捻挫は包帯やサポーターだけで良くなりますが、Ⅱ度Ⅲ度の場合はきちんと固定しなければ靭帯が緩くなってしまうため、数年後から数十年後に後遺症が出る可能性が高くなります。

ほとんどの捻挫が正しく治っていない

 とても残念なことですが、ほとんどの捻挫は正しく治っていないことが医学的な調査で明らかになっています(下図参照)。捻挫後、2~3年は症状がなく、患者さんも治療者側も治ったと勘違いしがちですが、5年以上経過するとほとんどの患者さんに後遺症がみられます。ありふれたケガであるためか患者さんも治療する側も軽く考えがちなので、後遺症を残している方がたくさんいらっしゃいます。

「不完全に治療され5年以上競技生活を続けている選手で足部に何らかの症状を訴えて受診した選手を無作為に100例選び,単純X線2方向撮影からの骨変化と臨床症状の特徴について検討した結果」 斎藤明義 他. 競技レベル選手の足関節捻挫-初期治療の重要性-. 日本臨床スポーツ医学会誌: Vol. 11, No.2, 2003.

 捻挫が治っていない原因は主に2つあります。ひとつは正しく診断されていないこと、もう一つは適切に処置されていないことです。正しく診断されていないのは、診察する人の技術、知識、経験不足が原因と言えます。よくあるのは、病院でレントゲン検査をして「骨は大丈夫だから心配ないと言われたのですが、痛みと腫れがひどいので・・・」と当院に来院するケースです。この、「骨は大丈夫」はとても危険です。骨折がないなら、どこの組織が痛んでいるのかを判断する必要があります。足を捻って腫れている場合、骨折がなければほとんどのケースで靭帯が痛んでいます。どの靭帯がどの程度痛んでいるのかは、触診、徒手検査、レントゲン検査、超音波検査などで判断します。プロのスポーツ選手ではMRIを用いることも多いです。

 まずは触診でどの靭帯が痛んでいるのかを判断します。次に徒手検査(内反ストレステスト、前方引き出しテストなど)を行って、手で関節の不安定性をみて靭帯の損傷程度を判断します。触診と徒手検査には技術と熟練が必要です。レントゲン検査では、骨折がないことを確かめた後、足を捻った状態でレントゲン検査を行います。これはストレス撮影(下図参照)といいます。病院でストレス撮影を行っていない場合、靭帯の損傷程度を診断されていない可能性が高いです。もう一つは超音波エコー検査で靭帯を直接撮影し、どの程度痛んでいるのかを見ることができます。このエコー検査も技術と経験が必要です。

 捻挫の正確な診断には、少なくとも上記のような検査が必要になります。したがって、見てわかるほど腫れている捻挫において、ストレス撮影やエコー検査をせずに「骨は大丈夫だから心配ない」と言われた場合、全く安心してはいけません。接骨院ではレントゲン撮影はできませんが、超音波エコー観察が可能です。当院では触診や徒手検査と合わせて超音波観察を行うことで、靭帯の損傷部位・程度を正確に判断できます

・内がえしストレス撮影では距骨の傾斜角度を計測し、健側(ケガをしていない方の足)と比べて5度大きければ靭帯断裂と判断します。

・前方引き出しストレス撮影では、健側と比べて距骨の移動が4㎜大きければ靭帯断裂と判断します。

 もうひとつ、捻挫が治っていない理由は適切に処置されていないことです。軽度の捻挫の場合であればサポーターや包帯で固定して痛みを管理するような治療でも後遺症は残りませんが、靭帯が切れている場合はそうはいきません。切れた靭帯の傷が開かない位置で固定していなければ靭帯が緩くなってしまい、後遺症を残すことになります。適切な固定角度を保つにはサポーターや包帯、テーピングでは不適切です。靭帯をきちんと修復させるにはギプス固定やギプスシーネといった硬性固定(硬い固定材料)が必要です。このことは多くの医学論文において報告されています。

 しかし、実際は多くの整形外科や接骨院では、捻挫の治療でギプス固定を行いません。そうしなくてもやがて痛みがなくなってスポーツが出来るようになってしまうために、治療者側も患者さんも靭帯が緩くなってしまっていることに気が付かずにいるのが現実です。また、ギプス固定をしていても固定角度が適切ではない場合も多く見受けられます。当院に転院してきた患者さんのギプス(下写真参照)や、整形外科・接骨院のホームページなどで見かけるギプスは、適切な角度のものはほとんど見られません。

 まとめると、固定の強度、角度が適切ではないこと捻挫の後遺症を多く残している原因のひとつです。足首を捻って外くるぶしが腫れている場合は、サポーター、痛み止め、湿布だけでは治りません。また、ホームページなどで「一回の治療で痛みが取れた」、「3日の通院でスポーツ復帰できた」などといった患者さんからの声を紹介している接骨院を見かけますが、それは全く的外れなものです。痛んだ靭帯は、靭帯を修復する細胞が新たな靭帯(主にコラーゲン線維)を合成して治っていきます。数回の治療で治るということは医学的にあり得ないことです。皮膚の切り傷が1回の治療で治らないことは、患者さんは経験的に知っていると思います。靭帯も同じことで、修復されるまでの期間は傷が開かないようにしておくことが必要なのです。

つま先が下がった角度で固定していると靭帯がきちんと修復せず、緩くなってしまいます。


子どもの捻挫は骨折が多い

 お子さんが足を捻った場合、ほとんどのケースで下のイラストのような裂離骨折(れつりこっせつ)をしています。軽く捻ったくらいではそうなりませんが、外くるぶしが腫れているほどの場合は高い確率で骨折しています。多くの医学論文において、子供の捻挫では靭帯が切れずに骨が剥がれると報告されています(下図参照)。

平田哲夫 年長児足関節外側側副靱帯付着部裂離骨折の検討中四整会誌,8 (2)207~2101996.

Haraguchi N et alAvulsion fracture of the lateral ankle ligament complex in severe inversion injury: incidence and clinical outcome.Am J Sports Med. 2007 Jul;35(7):1144-52. 

 この年齢では骨よりも靭帯のほうが強いので、靭帯に引っ張られて骨が剥がれてしまいます(下イラスト参照)。しかしながら、残念なことにこの骨折を見落とされている子供が多いのです。

 この骨折が見落とされる理由はレントゲン検査で写りにくいことです。外くるぶしの骨折を判断するときに、通常は足首のレントゲン写真を2枚(2方向)撮影します。ところがこのセオリー通りの撮影では見えない部分の骨折なので見落とされてしまうのです。下の2枚写真は同じ患者さんの同じ足です。左の通常撮影する方向の写真では骨折は全く分かりません。そのため見落とされるケースが多く、骨折部が癒合しないまま残ってしまって後遺症が残る例が多いのです。右の写真では骨折をはっきり確認することができ、骨片が離れてしまっています。このようなレントゲン検査以外では、エコー検査でも骨片を見つけることができます。

左写真:通常撮影する正面像。骨折は見えない。

右写真:裂離骨折を見るための撮影(ATFL view)。剥がれた骨片が見える。

 当院では、お子さんの捻挫の場合まず骨折を疑って診察し、触診と超音波エコー観察によって骨折を見落とさないようにしています(下写真参照)。エコーにて骨折を認めた場合、提携医療機関にATFL view 撮影を依頼し骨折があるかどうかをみています。骨折が認められた場合は徒手整復(ずれた骨片を元の位置に戻すこと)し、ギプス固定をおこなって治療します。

上のレントゲン写真と同じ患者さんの超音波エコー像。エコーでは小さな裂離骨折も確認できます。